Awashima Story~瀬戸内国際芸術祭2022をもっと楽しむ粟島こぼれ話

瀬戸内海に浮かぶ小さな島、粟島。この地は現代にいたるまで、ユニークな歴史を刻んできました。
 
ここでは、粟島の観光や、瀬戸内国際芸術祭のアートがもっと楽しくなる粟島のストーリーを紹介します!
 
瀬戸内国際芸術祭2022 粟島・三豊特集はこちら!

 

北前船で栄えた島

海運業に携わる島民たち

粟島は良い港に恵まれていたため、昔から航海業に従事する島民が多くいました。
 
特に江戸時代、日本海側の航路が開発され、大阪と北海道を結ぶ北前船が運行するようになると、粟島には、海運業に携わる島民がますます増えていきました。
 
北前船は、遭難事故の危険はあるものの、大阪・北海道間の航海では1回の往復で千両もの利益があったと言われています(※)。
 
粟島のある粟島伊勢神宮には、当時の北前船の様子を描いた絵馬が今も残っています。その大きな帆船を見ると、当時の船乗りたちの盛況ぶりがしのばれますね。
 
北前船日本遺産推進協議会のHPを参照
※絵馬は、瀬戸内国際芸術祭の期間中に行われる「粟島ええとこガイド」に参加すると見ることができます。

島四国八十八ヶ所めぐり

粟島島内を歩いていると、道端に仏像が置かれていることに気づくのではないでしょうか。仏像は、全部で88カ所あります。
 
これは、1827年に粟島島民の持ち船が合計88隻になった際、島民の1人である堺屋治右衛が船持ちに呼びかけ、船1隻につき石仏1基を寄進させて作ったのだとか。
 
この88カ所をめぐる巡礼は、「島四国八十八ヶ所めぐり」として、現在も継続。毎年4月末には、島の方々がお菓子やジュースのお接待などをして、お遍路さんを迎えてくれます(※新型コロナウイルスの影響で中止となる場合あり)。
 
▶「島四国八十八ヶ所めぐり」について
 

粟島海洋学校と、船乗りを育ててきた島


船に乗って粟島に来ると、港の近くに淡いブルーの建物があることに気づくでしょう。これは、粟島海洋記念館(※)。もともとは船乗りを育てる学校でした。
 
明治時代になると、日本では西洋型の帆船や蒸気船が主流になりました。こうした中、1897年、地元の村会議員である中野寅三郎氏が私財・敷地を提供し、粟島村立粟島航海学校が創設されたのです。
 
その後、1920年(大正9年)には本館や教室棟などが建てられました。これが現在の粟島海洋記念館となっています。
 

粟島海洋記念館の内観

第二次世界大戦が終わった時には、米軍によって教育用の器具や機械、書籍などが焼き払われたり、海に投棄されたりするといった苦難もありました。
 
そんな中でも島での船乗りの育成は続き、1954年、国立粟島海員学校として再スタートを切ります。
 

2019年に撮影

粟島海員学校では、タンカーなどの商船に乗る海員を多く輩出してきました。彼らはアジア、ヨーロッパ、中東などの海を巡り、活躍してきました。
 
1987年に粟島海員学校は廃校となりましたが、島には今も、海員学校のOBが残っています。また、1999年に粟島海員学校の本館などが国の登録有形文化財に登録され、今も粟島を見守っています。
 
※建物改修のため、粟島海洋記念館は2022年9月現在、立ち入り禁止となっています。

新たな島の息吹!アートの取り組み

海員学校がなくなり、人口減少が続いている粟島。その一方で近年、新しい動きが進んでいます。それが、アートに関する活動です。
 
粟島では、もともと島民アーティストの松田悦子さんが、ブイを使ったアート「ぶいぶいガーデン」をつくるといった活動が行われていました。
 

それに加えて2010年から始まったのが、三豊市が実施する「粟島芸術家村」です。これは、若手芸術家のアーティスト・イン・レジデンスを通じて、地域の活性化を目指すプログラム。
 
アーティスト・日比野克彦さん(現・東京藝術大学学長)のディレクションの下、粟島には若手アーティストが毎年、数カ月間滞在し、アート作品を創るようになっていきました。
 

現在も展示されているのは、2019年につくられた大小島真木さん、マユール・ワィエダさんの作品「言葉としての洞窟壁画と、鯨が酸素に生まれ変わる物語」です。本作品は、多くの島民やボランティアの協力の下で作られました。
 

あわろは食堂

ART CANVAS AWASHIMA
さらに、アーティストを支援してきたご夫婦が経営されているカフェ「あわろは食堂」や、島にある宿泊施設「ART CANVAS AWASHIMA」、「ル・ポール粟島」などにも、アーティストの作品や、その足跡を感じられるものが飾られています。。
 
粟島に来たら、ぜひアート探しをしてみてくださいね。
 

なお、2022年1月には、善通寺第一高校デザイン科の生徒たちが、島民たちの協力を受けながら「船出の誇りとはなむけの島」を制作。島に、新たな若い息吹が吹き込まれました。こちらも粟島芸術家村に展示されているので、ぜひ併せてご鑑賞ください。
 
松田悦子さんインタビュー(2019)
粟島芸術家村の滞在アーティストについて
▶「言葉としての洞窟壁画と、鯨が酸素に生まれ変わる物語」について
▶「船出の誇りとはなむけの島」について(週刊みとよ ほんまもんRadio!)
 

豊かな自然と、環境分野の挑戦


粟島は、自然豊かな島としての魅力もあります。島内を歩いていると、チョウチョのような昆虫をはじめ、さまざまな動植物を見かけるでしょう。
 
粟島で見られる生き物として特に有名なのが、海ほたるです。
 
「海ほたる」は、大きさ3ミリほどの甲殻類。夜の海に灯る幻想的な青い光が特徴です。
 
水質の良い海岸の砂底に生息するため、近年は「きれいな海の指標」としても注目を集めております。
 
海ほたるは、自然状態ではなかなか見ることができませんが、「ル・ポール粟島」では、初夏から秋にかけて、主に宿泊客向けに鑑賞会を実施しています。

こんな粟島で、2019年からはじまったのが、タラ オセアン ジャパンの活動です。
 
タラオセアンジャパンは、ファッションブランド「アニエスベー」が支援しているフランスの非営利団体「Tara Océan財団」の日本事務局。
 
「Tara Océan財団」では、科学探査船「タラ号」で、世界中を航海し、海が直面する環境的脅威や気候変化の影響を調査しています
 
この研究結果をもとに、タラオセアンジャパンでは、粟島を拠点に現在、親子向けのワークショップや作品展示といった海洋環境啓発活動を行っています。
 

三豊市とタラ オセアン ジャパンの取り組みについて
タラ オセアン ジャパンの最新の活動について

粟島の今後

アートと環境を通して、新しい動きが進む粟島。こうした取り組みを、今後、Instagram「アート粟島」などで引き続き発信していきます。ぜひフォローください。